第5話 ビートボクサーとボイパの音作りの違い

 ビートボクサーAFRAさんとボイパのKAZZさんの夢の対談③

 

【河本】ボイパは、ボーカル(歌)の一部って捉え方が必要ですね。この感覚は、ビートボクサーはあまり感じることがない、ボイパならではの感覚だと思いますよ。 

 

【KAZZ】ボイパって極めていくと、演歌に近くなると思うんです。

 

(一同:えっ演歌?という顔)

 

【KAZZ】演歌歌手って、当たり前だけど演歌をずーっと歌うでしょ。飽きないのかなと思いますよ。同じようにボイパをみると、ボイパも同じように続けていたら絶対に飽きるんです。だから、色々な歌(ア・カペラ)の中に色々なドラマを作っていく、これがボイパの感覚なんです。 

 

【KAZZ】Baby booのときに出した『プラネタリウム』という曲で、ボイパを取り入れようとしたけれど、うまく曲の中にはまらなかったんです。そこで、Nさんに、自分のボイパの音をサンプラーに入れてもらったんです。そして、その音で同じリズムを叩いてもらったら・・・、残念なことに自分のボイパをサンプリングした音とは全く別物なんですよ。とてもショックでした。

 

【AFRA】僕もビートボックスのアルバムを作るときに同じような経験がありますよ。音の厚みが欲しいときにレイヤー(重層的に)を作ってみると、逆に自分が求めている音のイメージからどんどん離れていく。かといって、楽器を加えてもだめで、うまくいかないんですよ。普段はマイク1本でやっているだけに、録音となると別の難しさを感じました。

 

【AFRA】最近、NAPOMが出したアルバムを聴くと、多重録音的に聞こえてくるんです。マイク1本でやっているとは思えない。でも1本でやっている!(笑 

 

【KAZZ】ビートボクサーがお互いの音を聴いたときに、 「勝ち負け」を感じる瞬間ってあるんですか。

 

【AFRA】それは、あるぅ~!(笑

 

 NAPOMクラスになると、もう一目置いているので「うまいな〜」の一言で済むけれど、TATSUYAあたりになると、「クソッ」って思うこともあるなぁ。(一同:大爆笑

 

 【KAZZ】ヒューマンビートボックスの人たちと話せて本当に楽しい。ビートボクサーひとり一人からは、卓越した能力が伝わってくるので、実は、今日これまでにしたような質問は失礼になるのではないかと思っていたんです。技術力で勝負しているんだから、その技術について質問するなんてとんでもないと思っていました。 

 

 【AFRA】僕も、これ(ヒューマンビートボックス)は、特別な人がやるものだと最初は思っていたんですよ。

 

 特別なことを特別な人がやっているのだと。でも、もう憧れて憧れて練習していたら、だんだんできるようになっていて、これはやればできるんだと思えるようになってきたんです。 

 

 【KAZZ】やっぱり、ヒューマンビートボックスって、自分のスタイルというのが先にあって広げていくものなのでしょうか。ヒューマンビートボックスって、その人の「作品」と捉えてよいものなのかどうか・・・ 

 

【TATSUYA】僕が自分で演奏していて思うのは、本当にその音は自分が好きな音なのか、求めている音なのかということ。僕には僕の、AFRAさんにはAFRAさんのイメージというのがあって、それをどうやって引っ張り出すのかということが重要なんだと感じています。だから、AFRAさんが演奏したものを自分が演奏したとしても、それは、全くの自分の作品(演奏)になるんです。その逆もまた然りで、自分の内側にあるものをさらけ出すのであって、ここでは精密にこの音を出してやろう、といった作り込みの感じはないと思います。 

 

【AFRA】そうね、僕らは「楽曲を作る」という立ち位置ではないと思う。ミュージシャンだと曲をつくるわけですが、ビートボクサーは曲を作るという概念はあまりないじゃないかなぁ。 

 

【TSTSUYA】これは、曲を残していくミュージシャンと、自分の感覚をいかに外に出せるかというアーティスト(即興芸パフォーマーに近い?)の違いに近いと思います。 

 

 【KAZZ】それは、自分の演奏に聴衆がどう注目してもらうかということに繋がっていると思いますね。自分は、ライブハウスで育ったからこそ、お客さんがよく反応してくれる音を探していくようになったんです。だから、聴衆がいて初めて今の自分の音があると思うんです。

 

 「聴衆に育ててもらった。そして、それが自信になっていく。」 

 

 

【AFRA】その点は、ビートボクサーも同じだと思うなぁ。 

 

【河本】そう考えると、さっきのKAZZさんの演歌歌手のたとえってわかりやすいですね。 

 

【AFRA】演歌歌手だと、この人の声で歌うんだったら、この曲だからいいという感覚がありますよね。より、個人というか個性が活かされてって感じで、この感覚って大切だと思いますよ。 

 

【河本】ビートボクサーの聞き取り調査をしていると、共通するマインドのようなものは見い出せるんですが、ビートボックスとしては、みなさん別物ですよね。 

 

【KAZZ】ビートボクサーって、基本は一人だと思うけれど、チームで演奏することはないんですか。 

 

【AFRA】やることもありますよ。一緒にやる楽しさもある。でも、基本はやっぱソロですね。 

 

【KAZZ】複数で演奏するときは、どんな感覚なんですか。 

 

【TATSUYA】ビートボクサーとしては、いかにして、

 

「1+1=2」にならずに、「1+1=3、4」になるようにするかだと思います。 

 

【KAZZ】!!!(驚いた様子で) そういう感覚は、僕らボイパにはあまりない感覚だと思います。僕らは、「ここが出たら、ここは引こう」というように考えるんです。 

  

【河本】その感覚って、クラシック音楽というか、アンサンブルでは重要ですね。楽器間のバランスやパート同士のバランスは、演奏上の自然な感覚として求められます。 

 

【AFRA】ビートボクサーが二人で演奏したとしても、二人以上で演奏しているのではないかと聞かせるように作っていくんです。これが、二人で演奏しているのに、単に二人出演奏しているというように聞こえたのでは、面白くないんですよ。 

 

【KAZZ】ア・カペラの中にもビートボックス寄りの人もいるし、ボイパ寄りの人もいます。 

 

【AFRA】最近では、両方の影響を受けて歌謡曲のように歌を聴かせながらビートボックスも聞かせるという人が現れてきていますよ。ビートボックスでもあり、ア・カペラ(ボイパ)でもあるという感じがします。 

 

【kazuma】2019年の日本ビートボックスチャンピオンになったShimo-Ren君は、ア・カペラ出身のビートボクサーと自称しています。ア・カペラとビートボクサーの間を行き来している感じです。この空席(ハンバーグ屋さんで、AFRAさんの横にあった空席)に座るのは、もしかすると、Shimo-Ren君かもしれないですね。 

 

(第6話へ続く)

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※2020年1月22日(水)AFRAさんがオススメの『俺のハンバーグ・渡辺』(渋谷)にて。

◇おことわり

 この文章は公費(科研費)による調査研究を目的とした記録ではありません。飲食費も全て自費負担しており、公費は一切使用しておりません。