ヒューマンビートボックスの未来を考える①
ヒューマンビートボックスは、インターネットの普及がなかったら、ここまで世界的にブレイクすることはなかったか、あったとしてもかなりの時間を要したでしょう。だから、インターネットの存在を視野に入れたヒューマンビートボックス論の展開が必要ではないか、そんなことを考えていたら、私の所属する学会から、「声のサロン」のまとめ役を引き受けてくれないかとの打診がありました。ちょうど、単なる技法論や指導法ではなく、声の文化的な存在としてのヒューマンビートボックスという議論をしたいと願っていたので、即お引き受けしました。
奇しくも学会からのオファーをもらった時に手にしていたのが、ケヴィン・ケリー(Kevin Kelly)著 服部桂訳 『〈インターネット〉の次に来るもの〜未来を決める12の法則〜』(NHK出版)という本でした。400頁のボリューム感、理系ウケしそうなタイトル、ちょっととっつきにくい本のようにも見えますが、職業や趣味を問わず、これから我々が「不可避(Inevitable)」(原題はTHE INEVITABLE)であろう未来と付き合っていくために、読んでおいて損はない本でした。今回は、この本の中で語られていた「FLOWING(流れていく)」という章のご紹介を交えながら、ヒューマンビートボックスの未来について、少し考えてみることにします。
◇コピーから始まりシェアされて発展するヒューマンビートボックス
経済の普遍的な法則では、何かが無料同然で手に入るようになると、その経済等式における位置が逆転すると言われています。例えば、ケリー氏は、次のような例を挙げています。
そして、インターネットの普及を背景にしてきたヒューマンビートボックスに、どのようなものかはまだ具体的にイメージできていないのですが、新たなツールまたはプラットホームが出現することで、音楽文化としての新たな流れが出来上がっていくのではないかと考えています。
ケリー氏は、インターネットを背景に、固定化されていたモノが流動化していく過程について、次のように述べています。
①固定的(希少性)
◇流動化によって新しい用途が見つかるか、それとも・・・
今のヒューマンビートボックスは、すでに③の段階に近づいて来ているのかもしれません。ビートボックスで使われる音には、まさに職人技としか言いようがないもの凄い音があります。一方で、様々な音の発音方法の多くが無料の動画で配信されており、日々その情報は共有され、発展しています。したがって、かなりの数の音の発音方法を無料で習得することが可能です。そして、最近では、ヒューマンビートボックスとヴォイスパーカションの垣根が無くなったというか、その違いすら意識されない時代に生まれた世代が登場しています。
では、未だあまり共有されていないものがありと考えています。話題は②へと続きます。