「ヤバい」って、ヤバい?

※2016年8月22日のブログを加筆修正しています。

 

 「キモい」「ウザい」「ヤバい」、学生に授業中に発してほしくない言葉ベスト3です。この三つの言葉の中で、最も多義的に用いられる言葉は、「ヤバい」でしょう。

 

◇「ヤバい」の用法

 とても美味しい食べ物と口にした時、

 「ヤバぁい」=とっても、おいしいね:delicious

 

 とても綺麗な夕焼けを見た時、

 「ヤーバーい〜」=とても綺麗ね:beautiful

 

 スリル満点のジェットコースターを乗り終えた時、

 「ヤバいよ、ヤバいよ」=いや〜、興奮した!:exciting

 

 カッコイイ好みのタイプの人と会った時、

 「あー、ヤバい」=ドキドキする:heart beating

 

 してはいけないことをした時、

 「ヤバっ」=ああ、やっちゃった:Oh no!

 

 雰囲気が悪い時、

 「ヤバいよね」=気味が悪いね:scaring

 

 とてもカッコイイ表現だった時、

 「ヤッバ〜い」=カッコイイ〜、しびれる〜:cool、awesome

  等々 

 ※英語に置き換えた表現は、もっと適切なものがあるかもしれません。

 

◇「や(ya)の発音にポイントがあった

 文脈に応じて色々な意味になりますね。様々な場面で使えるという汎用性があるという意味では、便利な言葉かもしれません。また、「i」の母音が「a」に変化し、唇が閉じられて破裂する「b」の後に、再び「a」が来るという、発音の流れが、話し手の様々な感情を入れやすくしているとも考えられます。例えば、「i」から「a」をゆっくり発音し、「b」から思いっきり息をためて「a」を発音すると、「いやっーい」となりますし、「i」からすぐさま「a」を発音し、短く「ba」で止めれば、「ヤバっ」になります。色々なニュアンスのバリエーションを作りやすい言葉でもあります。

 

 ただ、便利だだけに、どんな時にでも「ヤバっ、ヤバっ」と口から出てきてしまうこともあるようです。先日、学生と共に訪問演奏に出かけた時の昼食での出来事です。「ヤバい」という言葉の話になり、この言葉を気にしだすと、周りの学生が短時間に何度も「ヤバ、ヤバ」と口にしていることが気になってくるという話しになりました。そして、自分自身も、無意識に「ヤバ」と口にしたことに気付き、思わず「ヤバ」っと言ってしまうのです。

 もうこうなると、志村けんのコントのようです。「ヤバい」という言葉に反応するバカ殿様が登場!(←尺八の効果音と共に)

 

◇「Yabai」は世界共通語?

 ヒューマンビートボックスの世界大会でも、「やばい(Yabai)」を流行らせようとしていた日本人男性がいました。その男性は、文脈から「Cool!」とか、「Awesome!」「Crazy!」といった意味で使っていたと思います。

 

 「ヤバい」という言葉は、授業中に使ってほしくはありませんが、次のような発問に繋げることで、単に「言葉狩り」するのではなく、豊かな日本語表現に繋げることができるのではないかと思います。

 

◇「ヤバい」表現の多様性、コトバって面白い!

 【問】文中で使われている「ヤバい」という言葉について、この場合の「ヤバい」を他の表現に言い換えた場合に最も適切な表現を選びなさい。

 ①美味しい ②美しい ③汚い ④恐ろしい ⑤気持ち悪い

 

 こうすると、「ヤバい」という俗語は、若者言葉として一蹴するにはもったいない気がしてきます。言葉は、場による使い分けができればよいのですから。

 

 学生A 「あっ、Bちゃん今、ヤバって言ってたよ」

 学生B 「ああ、敬語の授業はちゃんと受けてるのに〜、ヤバって出てきちゃう(笑」

 私 「・・・・笑。今は授業中じゃなくて、ランチタイムだから、いいよ」

 学生B 「いや、もうホント、ヤバっ! あっ、ヤバっって言ってる!、もう」

 私 「ヤバいツボにはまったね」

 

 こんな会話を学生と楽しんでいます。