ヒューマンビートボックスの未来を考える①〜インターネットの存在

 諸事情により、しばらくブログの更新をお休みしていましたが、やっと再開する運びとなりました。タイトルどおり、「ほぼ週イチ」で更新していきますので、よろしくお願いします。

 

 再開第1回は、「ヒューマンビートボックスの未来を考える①」と題して、キーワードを上げながら書いてみようと思います。シリーズ化しようと思うので、今回は①としました。

 

 ヒューマンビートボックスは、インターネットの普及がなかったら、ここまで世界的にブレイクすることはなかったか、あったとしてもかなりの時間を要したでしょう。だから、インターネットの存在を視野に入れたヒューマンビートボックス論の展開が必要ではないか、そんなことを考えていたら、私の所属する学会から、「声のサロン」のまとめ役を引き受けてくれないかとの打診がありました。ちょうど、単なる技法論や指導法ではなく、声の文化的な存在としてのヒューマンビートボックスという議論をしたいと願っていたので、即お引き受けしました。

 

 奇しくも学会からのオファーをもらった時に手にしていたのが、ケヴィン・ケリー(Kevin Kelly)著 服部桂訳 『〈インターネット〉の次に来るもの〜未来を決める12の法則〜』(NHK出版)という本でした。400頁のボリューム感、理系ウケしそうなタイトル、ちょっととっつきにくい本のようにも見えますが、職業や趣味を問わず、これから我々が「不可避(Inevitable)」(原題はTHE INEVITABLE)であろう未来と付き合っていくために、読んでおいて損はない本でした。今回は、この本の中で語られていた「FLOWING(流れていく)」という章のご紹介を交えながら、ヒューマンビートボックスの未来について、少し考えてみることにします。

 

コピーから始まりシェアされて発展するヒューマンビートボックス

 

 経済の普遍的な法則では、何かが無料同然で手に入るようになると、その経済等式における位置が逆転すると言われています。例えば、ケリー氏は、次のような例を挙げています。

 「かつて夜間の電気照明が新しく希少だった時代、貧乏人はロウソクを融通し合って使っていた。その後に電気が簡単に使えてタダ同然になると、人々の好みは逆転して、夕食のテーブルにロウソクを灯すのが豪華だと思われるようになった。」(同上書p.91)
 これは、アナロジーとして様々なモノに応用できます。例えば、蝋管蓄音機やレコードのように録音された音が貴重だった時代では、生演奏のほうが一般的だったのに、現代のように録音された音が簡単に手に入るようになると、逆に生演奏の価値が格段に上がります。つまり、コピーが潤沢になると、それは無価値になり、その代わり、コピーできないモノは希少化して価値をもつということです。
 これを、ヒューマンビートボックスに置き換えて考えてみましょう。
・・・・打楽器や電子楽器の音を、貧困層の人々が口などを使ってコピー(模倣)した。初めは、コピーされた音自体が珍しく、それだけで注目を集めた。しかし、インターネット上でコピーされた音やその発音方法が無料か無料に近いかたちで拡散すると、その音自体の希少性は薄れ、その代わりにに楽器音の単なるコピーではない音の希少性が増してくる。・・・・
 今、ヒューマンビートボックスで使われている音の数々は、勿論、明らかに楽器等の模倣音というものもありますが、ここ数年のJBA(Japan Beatbox Championship)やベルリンで3年おきに開催されているBeatbox Battle World Championshipを見ると、コピーという段階を越え、人間由来の音を追求し、新たに「Remix(再構築)※」という新たな展開へと向かっていることを実感します。※ケリー氏も同上書の中でキーワードの一つに挙げている。

そして、インターネットの普及を背景にしてきたヒューマンビートボックスに、どのようなものかはまだ具体的にイメージできていないのですが、新たなツールまたはプラットホームが出現することで、音楽文化としての新たな流れが出来上がっていくのではないかと考えています。

 

 ケリー氏は、インターネットを背景に、固定化されていたモノが流動化していく過程について、次のように述べています。

 

 ①固定的(希少性)

  それぞれが職人技で完結して自立していて、高品質な複製品として販売されることで、それを創造した人が報われる。
 ②無料(どこにでもある)
  あまりに複製されたプロダクトはコモディティ化する。安価で完璧なコピーが流通し、需要があるところに拡散していく。
 ③流動的(共有される)
  バラバラになった各要素が流動化し、それが新しい用途を見つけ、リミックスされて新たにバンドルされる。
 ④オープン(なっていく)
  専門性をもたないアマチュアがそれらを使って新しいプロダクトや斬新な製品カテゴリーを創りだす。オーディエンスがアーティストになる。

 

 

 今のヒューマンビートボックスは、すでに③の段階に近づいて来ているのかもしれません。ビートボックスで使われる音には、まさに職人技としか言いようがないもの凄い音があります。一方で、様々な音の発音方法の多くが無料の動画で配信されており、日々その情報は共有され、発展しています。したがって、かなりの数の音の発音方法を無料で習得することが可能です。

 ただ、未だあまり共有されていないものがあります。それは・・・

続きは、来週の「ほぼ週イチ☆ブログ」でお話します。