【第10回】ヒューマンビートボックスとヴォイパの楽しみ方とは(中編):AFRA、KAZZ、杉村一馬による鼎談

最近、ベーパ会という集まりがあるんです!

 

 聞き慣れないこの集まりは、声のベースと声のパーカッションを担当する人たちが集まって話をしようという集まりのことを言うんだそうです。どうしてこんな呼び名を付けたのか、ちょっと興味がありませんか。このネーミングにはア・カペラ文化特有の背景があるようです。

 KAZZさんが言うには、ヴォーカルパーカッションって、ベースパートにとても気を遣っているんだそうです。逆にベースパートの人はヴォーカルパーカッションのことをとても気にしているんだそうです。だからこそ、ベースとヴォイパが合体した、“リズム隊”とでも言うべき集まりの中で困りごとを共有するという流れが出来てきたと考えられます。吹奏楽部でもありますよね「低音部」とか、「ラッパ隊」とか・・・そういう仲間意識がア・カペラのベースとヴォーカルパーカッション担当者の間にはあるようです。

 

 

それは声のBANDですね(by AFRA)

 

 KAZZさん曰く「先日、AFRAさんが紹介してくれたBerywam(※1)なんかは、ヒューマンビートボックスのグループを名乗ってはいるけれども、これはア・カペラなのではないか、と感じさせる面もあります」と言っています。公式YouTubeチャンネルがあるので、是非こちらからBerywamの演奏を聴いてみてください。

【Berywam 公式YouTubeチャンネル】

 

https://www.youtube.com/channel/UCxXFx2jz8N02sNqv1VeDEGA

 

※1:Berywam(ベリーワム)

 フランスのトゥールーズを拠点とするヒューマンビートボックスのクルー。French Beatbox Championship 2016で優勝し、Beatbox Battle World Championship 2018では、Crew部門で優勝しています。ア・カペラのコーラスグループのようなヒューマンビートボックス、ヒューマンビートボックスのようなア・カペラのコーラスグループ、どちらが適切な表現かは視聴者のご判断に委ねますが、声の可能性を再認識させてくれるグループです。

 

 発話器官を使っている点ではア・カペラもヒューマンビートボックスも同じなのですが、KAZZさんの指摘にもあるように、ア・カペラがリズムから発想(音楽作り)をするとこのような音楽表現になるのではないか、というグループです。もうここまでくると、ヒューマンビートボックスだの、ヴォイパだのといった区別をすることなく、単に声の音楽表現とだけ捉えて楽しむべきグループです。敢えて言うなら、ア・カペラなヒューマンビートボックス・クルーとでも言えるでしょう。

 

 

リズム中心にできているア・カペラグループがある

 

 AFRAさんの「声のBAND」という発言に対し、KAZZさんはリズム中心にできているア・カペラグループとして、Vocal Sampling(ヴォーカル・サンプリング)(※2)というア・カペラグループを例に出しました。声だけでパーカッシブな雰囲気を作っていくのですが、それは打楽器の音の模倣というよりは、声を使ってリズムを組み立てていくと言った方がわかりやすいかもしれません。音楽の教科書に必ずといっていいほど掲載されている、インドネシアのバリ島の「ケチャ」にも似た多層構造をもつ声の音楽と言えるでしょう。

 

※2:Vocal Sampling(ボーカル・サンプリング)※グループ名

 1980年代から活躍するキューバ出身のア・カペラのコーラスグループ。日本でもアルバムが発売されており、多声的な構成でリズムを構成していく様子は、打楽器の模倣ではない音でパーカッシブなグルーブを作っていくという面白さがあります。なお、動画検索をすると様々なライブ映像がヒットしますが、著作権に抵触するかもしれないサイトが多いため、本コラムではリンクの紹介はできません。

 

 

日本人らしさを出したア・カペラづくりってあるのだろうか

「ケーキ」「まんじゅう」「まんじゅう」より和菓子じゃないの?

 

 KAZZさんは、ご自身がメンバーを集めて結成したPermanent Fish(※3)というア・カペラグループの活動を引き合いに出し、日本国内ではインディーズだったけれど、韓国でメジャーデビューを果たし、その時に日本人と韓国人では、コーラスの作り方(ハモり方)が違う事を実感したと言います。それは、あくまでもたとえとしてなのですが、韓国人はドーンと前に出して作っていくハモり方、日本人はまず手前で作ってそれを徐々に出していく作り方というたとえで説明しました。そのたとえを、「ケーキ」か「まんじゅう」かってKAZZさんは言っていましたが、繊細さという点を例えるのなら「まんじゅう」よりも「和菓子」の方が、ピンと来るかもしれませんね(笑

 

※3:Permanent Fish(パーマネント・フィッシュ)  KAZZさんの呼びかけに応え、学生ア・カペラのTosea、Takeshi、Takaakiと東京で活動していたShunsukeによって当初は結成されました。グループ名は「声の海を、どこまでも泳ぎ続ける魚たち」を意味しています。日本ではインディーズでしたが、2008年4月、韓国でメジャーデビューを果たし、2009年11月、大韓民国文化芸能大賞外国芸能人賞を受賞しました。途中でメンバーの入れ替わりがあり、2017年12月末でKAZZさんが脱退し、2019年4月30日に解散しました。

 

 このようなハモり方の違いを文章で説明することは難しいのですが、歌っているご本人たちは、その違いについて体感している・・・その違いを私たちに分かりやすく伝えるための言い方として、

「遠くでドーンとハモる」「近くで繊細にハモる」という表現をしたのでしょう。このような違いというのは、ライブで体感するしかありません。先日AFRAさんが言っていた「甘いと説明するよりも、舐めさせてみよう」という話題に通じますね。

 

 

教会音楽をルーツとするア・カペラのルーツは演奏する「場」の環境が重要な要素

 

 ア・カペラと、中に「・」を入れているのには理由があります。

実は、この言葉は元々はイタリア語で a cappellaと書きます。直訳すると「伴奏無しで」という意味です。西洋音楽では、グレゴリオ聖歌のような教会音楽がルーツであると考えられています。一方、日本では「ア・カペラブーム」という言葉があるように、マスコミ(主にテレビ番組)を中心に、このような音楽スタイルが広がっていきました。しかも、教会音楽のようなクラシカルな音楽では無く、ポップな音楽が中心に、しかも既存曲のカバーで自分たちの声域や持ち味にアレンジして歌うということを主流にして広まっていきました。この辺りの話しは、『ボイパを論考する』の杉村一馬さんのサイトで詳述されています。

 「自分たちの声域や持ち味にアレンジして歌う」という点は、発行されている楽譜を基に音楽を創っていくことに慣れている人たちにとっては、とても難しさを感じる面だと思います。だって、学校の音楽の授業では「楽譜通りに演奏しなさい」って言われることが多いでしょう? でも、ア・カペラは違うのです。自分たちでカバーの方法を考えたり、場合によってはオリジナルの歌を創っていくのです。

 

 

魂の救いを求める音楽とカラオケのような娯楽の音楽とは違って当然

 

 ただ一つ言える大切なことは、AFRAさんの言葉を借りるなら、救いを求めるか否か娯楽がどうかという違いがあったとしても、「その音楽が人の心に刺さるものであるかどうか」という点です。そのような意味においては、音楽の創りの違いこそあれ、ア・カペラとヒューマンビートボックスに大きな区別を付ける必要はないと言えるでしょう。

 

ア・カペラでは声の帯域幅(周波数の幅)にまで注意を払う

 

と言います。グループで演奏を創っていくア・カペラの場合、同じような声の帯域幅で創ってしまうと「モコモコする」とKAZZさんは表現します。音響的に言うと、狭い幅の周波数帯に声が集まってしまうということを意味します。そうならないように、指導の時には各々が高い周波数帯から低い周波数帯までをカバーできるように心がけていると言います。そこまで考えて指導しているとは・・・。楽譜をただ見ているだけではそのような帯域幅については気づきにくいと考えられます。それは楽譜に頼るのでは無く、耳に頼るという姿、あっこれって、すらぷるためさんが言っていた、「デッサン力」と同じ事を言っていると考えられます。

 耳によるデッサン、観察する力、そういったことに面白みを感じることで、情操教育にも結びついてくるのではないか、KAZZさんの発言からはそのようなことが示唆されます。

 

そして、ライブを聴きに来てくれる聴衆は感じ取るのだそうです。これは奏者と聴衆の両方に通じることでしょう、それは・・・

 

今ここで音楽が創り出されている瞬間を楽しめ!

 

自分たちで演奏することも確かに楽しいことですが、目の前で創られていく音楽を聴くという側になっても楽しみがある、この両方が音楽の楽しみにはあると言えるのではないでしょうか。(河本)

 

(後編に続く)